非IT業界の起業家はココでつまずく!開発会社選定のポイントと失敗談

創業手帳

非IT業界の方が初めて開発会社に依頼する際に注意すべきポイントは?

development-corporation

(2017/01/12更新)

ここまでは主にノンプログラマの方でも出来る開発ツール等を紹介させて頂きましたが、やはり本格的なプロダクトを開発するとなると、創業メンバーにエンジニアがいる場合を除き、開発会社に外部委託するのが通常です。特に昨今は分野に限らず、ITをベースにしたメディアやアプリでのスモールスタートがトレンドですし、デジタルネィティブと呼ばれる様な若い世代の方は、むしろそちらの方が身近なのではないかと思います。

ですが異業種の方であれば(WEBマーケティング等の部門で働いていた方を除き、)多くの方はソフトウェアの開発会社とは何をする会社で、どの様な付き合い方をすれば良いのかよく分からないのでは無いでしょうか。
しかし分からないからと言って適当な選定や付き合い方をしていると後々大きなトラブルに巻き込まれるケースが多々あります。
そこで今回は本当にあった失敗談を参考に開発会社を選定すべきポイント、注意すべき点についてご説明致します。

失敗談1:開発会社を信頼して全てを任せていたらいつまでたってもアプリが完成しなかった

image2

音楽業界の出身であるAさんの例

音楽業界の出身であるAさんは、貴重な古いレコードに特化した個人間取引のサービスで起業しようと考えていました。

ただし、開発費を抑える為に初期のリリースはスマホアプリのみにしました。コンセプトはシンプルですし、機能的にも「メルカリ」などの同種のアプリを参考にすれば良かったので、古くからECサイトの開発実績がある会社に依頼を行い、全てお任せにして完成を待っていました。

しかし、いつまで経ってもアプリは完成せず、業を煮やしたAさんが開発会社に乗り込み、開発中のアプリを実際に見せてもらうと、出てきたのは基本的な機能こそ出来ていたものの、画面がさくさくと動作せずに、それどころかエラーで頻繁に落ちてしまう様な代物でした。

理由を聞くと、PC上でのECサイト開発に関しては多くのノウハウを持つ会社ではあるものの、スマホアプリに関してはあまり開発実績が無く、現在エンジニアが少しずつ勉強しながら開発している、との返答が返ってきてしまいました。

「ECサイトの開発実績」に騙されるな!

このケースでの問題はスマートホンとPCサイトでは主に画面部分に使われるプログラム言語が異なっているにも関わらず、「ECサイトの開発実績」にのみ目を奪われ、選定をしてしまった事が主な要因です。

基本的にPCでもスマホでもユーザー情報や売買履歴を記録する機能等は同じプログラム・ノウハウで作る事が出来ますが、主に画面周り等の部分はPCとスマホでは別の技術・知識を必要とします。

この様にスマホに特化したアプリを作る場合、スマホアプリ自体の開発経験・ノウハウがあるのかをしっかりと調査してから依頼する必要が有ります。

またIOSとAndroidでも別々のプログラム言語を使うので両OSでリリースしたい場合はそれぞれのOSで開発経験があるかどうかも予め確かめておく必要があるでしょう。

失敗談2:リリース後にサイトの改善をお願いしたが、非協力的な対応をされてしまった

image3

エンタメ業界から起業したBさんの例

エンタメ業界から起業したBさんが立ち上げたのは、アーティストやミュージシャンなどをバックアップするための特化型のクラウドファンディングでした。

当初予定していた開発会社の見積りが1000万と提出されてしまったため、仕方無く別の開発会社に依頼し、打ち合わせで同席した営業担当と開発担当と交渉を重ね、その結果開発費を何と400万円にまで圧縮する事が出来、無事5ヶ月後にサイトをリリースする事が出来ました。

しかしサイトオープン後に困った点が見つかりました。通常のサイトであればログイン後にブラウザを落としても一定期間はログインされたままです。しかしこのサイトは一度ブラウザを落とすと又IDとパスワードを入力してログインし直さなければならない作りになっていたのです。

当然ここは修正して欲しい点なので、再度開発会社に連絡したのですが、先方はセキュリティの低下を理由に修正を行おうとしません。AmazonやGoogleの様なシステムでさえ、一定期間はブラウザを落としてもログインされたままなのだから、少々大げさではないかと思いましたが、専門のエンジニアに「セキュリティの低下」と言われてしまうと、何だか重大な問題を引き起こしてしまう様な気がして、仕方なくその問題は放置されたままになってしまい、結果としてやはりリピーターが付き辛い状況に陥ってしまいました。

品質を保ちながら大幅に開発費を削減デキるはずがない!

このケースで問題なのは、何故1000万円の開発費が400万になったのか、価格が大幅に下がった事に喜ぶ余りその理由を深く考えなかった事が要因です。

開発価格が400万円でその期間が5ヶ月間の内訳を見てみましょう。仮に一人につき人件費が月に30万円かかるとします。初回の打ち合わせで同席したのが二人だったことから人件費だけで月に最低60万はかかります。これが5ヶ月ですから人件費だけでも最低300万円発生している計算になり、会社の売り上げとしては僅か100万円しか残りません。(これに税金等が発生するので実際はもっと低くなるでしょう)
400万円と言うとかなり高額に感じますし、スモールベンチャーには捻出出来るぎりぎりの額ですが、システムの開発と言うのは非常に時間と労力がかかるものですので、請負側の利益も決して多くは残らないのが実情です。

また修正の際にBさんが追加の費用を提案したにもかかわらず、現場のエンジニアにそれらしい理由でやんわりと否定されてしまったのは、恐らくこの様にぎりぎりの体制で回している為、労力を割く事が出来なかったと推測出来ます。

またBさんは打ち合わせに同席したエンジニアと営業の関係がうまく噛み合っていなかった様にも感じたらしく、これは恐らく営業側は値段を大きく削ってでも受注を取りに行こうとしたものの、結局そのツケを背負わされるのはエンジニア側なので、同じ社内の人間であっても利害に齟齬が発生していたと思われ、エンジニア自身のモチベーションもあまり高くなかった様に感じられます。

もちろん開発費が安くなるに越した事は無いのですが、本来であればその代わりに機能の制限等の提案があって然るべきです。

このように根拠も無く大幅に価格がカットされた場合、喜んで安易に即決せず、一度社に持ち帰って相談したり、多少費用が発生しても技術コンサルティングに相談する等、客観的な意見を冷静に取り入れ判断する事が重要です。

まとめ

image4

①のケースは技術的な知識不足が原因なので、非IT業出身の起業家がそれを考慮するのは難しいと思いますが、開発会社にも得意分野、不得意分野が有り、またIT業界はかなり技術の移り変わりが激しく、蓄積されて来たノウハウがすぐに使えなくなってしまう厳しい業界ですので、いくら相手がプロの開発会社だからと言っても安心して全てを任せっきりにしてしまったのが問題でした。

専門家でも無いのにプロの開発会社に口を出すのが憚られる気持ちも分かりますが、自分自身のプロダクトですから、技術以外の部分で、例えばエクセル等で開発スケジュールを共有してもらうなど、予めなるべくトラブルが発生しないような、もしくはそれを事前に察知出来る様な提案をこちらから積極的に行う必要があった様に思われます。

②のケースでは人とお金の問題ですが、IT系の開発費はその殆どが人件費に当たります。数百万でも高いと思う気持ちは分かりますが、大体の人件費と開発期間から逆算すると、意外に会社に利益は残らないと言う事実が理解出来ると思います。当然そのツケは現場のエンジニアに回り、最終的にはプロダクトの出来栄えに影響を与えますので、根拠の無い安易な値下げを提示された場合には却って要注意です。中には開発途中でストレスに耐え切れなくなったエンジニアが失踪してしまい、開発自体が頓挫してしまったなどと言う笑えないケースも有りますので、決して価格だけで判断しない様にしましょう。

例えば腕の良い歯医者さんや美容師さんを探すのが大変な様に、最適な開発会社を探すのもやはり簡単な事では有りません。主な要因はやはり「人」ですが、ITの場合ここに技術的要因が絡むので、ITに詳しく無い方がそれを選定するのは更に難しい作業になります。

特にベンチャー企業の立ち上げ時は心が熱く燃えており、とにかく早くプロダクトをリリースしたいあまり、時として冷静な判断が出来なくなる事が多々ありますので、場合によっては技術コンサルティングを活用するなどして、俯瞰的且つ専門的な意見を取り入れ開発会社を選定、お付き合いする様に心がけて頂ければ幸いです。

創業メンバーがノンプログラマでもスマホアプリで起業したい!
エンジニアを採用しなくてもOK!初心者でもできる、スマホアプリ作成術

(監修:ByteRoad株式会社CEO・CTO 小島直弘(こじまなおひろ)
(編集:創業手帳編集部)

創業手帳冊子版は毎月アップデートしており、起業家や経営者の方に今知っておいてほしい最新の情報をお届けしています。無料でお取り寄せ可能となっています。

創業手帳
この記事に関連するタグ
創業時に役立つサービス特集
このカテゴリーでみんなが読んでいる記事
カテゴリーから記事を探す